• 小説 星と陽の間で
  • 夫のシンガポール赴任に伴い来星することになった主人公・映子が、シンガポールと日本の価値観の間で揺れ動く。 そんな映子のこれから始まるシンガポール生活への不安や困惑、希望を描いたストーリー。

星と陽の間で 第2話


前回までのお話
突然夫から転勤を言い渡された映子。
赴任先は謎の南国、シンガポール。
全く想像もできないこれからの生活に、映子の不安は膨らむばかり…




いつも以上に眠れなかった。
芽衣を産んでから6ヵ月、朝までぐっすり眠れた日なんてない。「でも私、お母さんだもんね。みんなやってるのに私だけ、ね…」
自分に言い聞かせるように小さな声でつぶやいてみる。

いつも以上に眠れなかった。
芽衣を産んでから6ヵ月、朝までぐっすり眠れた日なんてない。「でも私、お母さんだもんね。みんなやってるのに私だけ、ね…」
自分に言い聞かせるように小さな声でつぶやいてみる。

「なんか言った?」
メールをチェックしながらコーヒーを飲んでいる夫。
私のことを気にしているのかいないのか、モニターからは目を離さない。

「ううん、なんでもない。今日久しぶりに佳奈とお茶でもしてこようかなー、と思って」

「おぉ、佳奈ちゃん。相変わらずバリバリ働いてるの?まだ独りだったよね?
まぁ彼女は家庭を持つより仕事してる方が向いてそうだけどね」

数回会っただけの私の友人のことを彼はどれぐらい理解しているのだろう…

「佳奈、頑張ってるよー。この間もけっこう大きなプロジェクト任された、って張り切ってたし。2ヶ月に1回はシンガポールに出張行ってるんだって」

同じタイミングで入社した佳奈と私は性格は正反対と言ってもいいぐらいだったけどなぜか気が合い、二人で旅行に行ったりもした。

佳奈は私が結婚する少し前に再び転職し、いつも一緒というわけにはいかなくなったけれど、それでも月に1、2度はランチかお茶をする仲だった。

二人でゴハンに行ってもなかなかメニューの決められない私の分まで「映子の今日の気分はコレじゃない?」と提案してくれる。
結局いつもその佳奈のオススメに決めてしまい、自分の優柔不断さが嫌になったりもするのだけど、そんな私を見て佳奈はいつも「映子はそのままでいいのよ。そういうところも含めて映子なんだから」と言ってくれる。

一度佳奈に「私、自分の優柔不断さが嫌になる。一緒にいてイライラしない?」と話した時も「そう?私たち、いいコンビだと思わない?私はそう思ってるんだけど」とサラッと笑顔で言ってくれた。

そう言えば芽衣が産まれてから随分と佳奈に会っていないな。

佳奈に会いたいな…

「じゃあ行ってくるわ。今日は接待ディナーだから夜は要らないよ。先に寝ててね」
という夫の声で我に返った。

「はーい。今日もお仕事頑張ってね。行ってらっしゃい」
「いってきまーす」

さてと、
私もお茶でも飲もうかな、とお湯を沸かし始めた途端、芽衣の泣く声が聞こえてきた。

もうそんな時間か。
温かいお茶なんて長い間飲めてない気がする。
いつになったら座って温かいお茶が飲めるんだろう…

でも仕方ないよね、私お母さんだから…

頭ではわかっているつもりでも鼻の奥がツンとなり、涙が出そうになる。
一度「あれやりたい!」と言葉にしてしまうと、もう頑張れないんじゃないかと思ってしまう。

自分に言い聞かせるように「私はお母さん」と少し大きめの声で言ってみたが、
「だからどうした」というような芽衣の泣き声にかき消された。

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