
星と陽の間で 第6話
前回までのお話
娘1人を病院に連れて行くにも母の手を借り、1人で何役もこなす周りのお母さんと自分とを比較して、何もできない自分にますます自己嫌悪に陥る映子。
日本のお母さんはいつも頑張っている。
しかし、そんなに頑張ることが果たしていい事なのだろうか…
「久しぶりに佳奈に会えてよかったわ。出張のお陰やね」
いつもは仕事を片付けるとシンガポールを楽しむ間もなくすぐに帰国してしまう佳奈だが、今回は映子のこともあり、ランチも兼ねて美子とグランドハイアットの10 scotts でハイティーをすることにした。
彼女に会うのはいつぶりだろう。
「そういうわけで映子のことよろしくね」
「うんうん、まかしといて!佳奈」
「ふふ、シンガポールに来てからすっかり関西弁なんだね、美子」
「ふふ、こっちけっこう関西出身の人多いねん。
日本を離れてるからか、結束力が強くてさー。
しょっちゅう一緒におったらすっかり関西弁に戻ったわ。
ダンナも関西人やから家でも関西弁やしな。
外国に住んでたら日本におる時以上に自分が何者なんかを意識するようになったわ」
「住んでみないとわかんないよね、そういうのは。そう言えば今日子供ちゃんたちは?お手伝いさん?」
「そうそう。子供ら置いて友達とお茶とか日本やったら考えられへんくない?この生活したらヘルパー無しの生活には戻られへんわ」
「ホント羨ましい生活よね。
っていっても私みたいな独身には全く関係ない話か」
「そんなことないない!同じコンドに住んでるアメリカ人、独身のおっちゃんやけどヘルパーおるで。
私も気になってそのヘルパーに毎日何してんの?って聞いたことあんねん。ご飯作って、掃除して、アイロンかけて、犬の散歩行ってるって言うてた。
休みの日に溜まった家事と洗濯して、疲れもとれんまま月曜日からまた仕事とか、アメリカ人には考えられへんのやろな。
手間と時間と費用とを考えたら住み込みのヘルパー雇った方が安そうやし。
佳奈もシンガポール赴任になったらヘルパー雇ったらええねん。自分のためだけに時間使えるって思ってる以上にプライスレスやで」
シンガポールに住んだことのない者からすると、全く想像もできないヘルパーとの生活。
小さい子どもがいる家庭だけが雇うわけでもないのか。
人の目を気にすることなく、自分が必要だと思えば雇えばいいし、どれだけ困っていても自分が必要ないと判断すれば雇う必要もない。
日本人もこれぐらい人の目を気にせずに生きていけたらいろんな事が楽になるんだろうな。と、休みの日ごとに掃除洗濯に追われている自分の姿を思い出す佳奈だった。
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