• 小説 星と陽の間で
  • 夫のシンガポール赴任に伴い来星することになった主人公・映子が、シンガポールと日本の価値観の間で揺れ動く。 そんな映子のこれから始まるシンガポール生活への不安や困惑、希望を描いたストーリー。

星と陽の間で 第13話


前回までのお話
実際に物件を見ることでシンガポールに住むということが現実味を帯びてきた映子。
メイド部屋を見てショックを受けた映子に対して、固定観念は捨てたら、と簡単に言う夫。
久々に長い時間一緒に過ごす夫との価値観の違いに薄々気づいてきた映子だが…




「いらっしゃい!どうぞどうぞー」

美子さんのお宅もやっぱり床は大理石。
アジアンテイストなインテリアとアンティーク風の家具が融合していて、とてもおしゃれでなんだか不思議な空間。

そんな不思議な空間に流れている懐かしい香り。
肉じゃが?お味噌汁?
シンガポールなのに?
そしてキッチンに立っているのは…噂のヘルパーさん!
和食も作れるんだ…なんだか不思議…

「おじゃましまーす。初めまして!
夫の耕平と娘の芽衣、7ヶ月です。
これ、お好きかどうかわからないんですけど日本の味も恋しいかと思って」

「いやーん、とらやの羊羹!たまにめっちゃ食べたなんねん!!嬉しいわー。あ、ごめんなさい!
改めまして…
初めまして美子です。こちらウチの三男坊コタローくん8ヶ月です。よろしくねー。で、どう?シンガポールは?」

「暑いです!そして寒いです!そして何語話してるのかわからないです!私、こんなところで生活できるんでしょうか?」

「思うよねー。私も最初いろいろ『えっ?!』って思った。でもすぐ慣れるよ。皮膚も南国仕様になってくるからエアコンにもすぐ慣れる」

「慣れるんですか?!慣れるようには思えない…。
ところでシンガポールの人って何語を話してるんですか?
昨日乗ったタクシーの運転手さんが全然言葉通じなくて。でもこっちの英語は理解してるみたいで…」

「ふふっ。タクシーの運転手さんね、あれ英語よ。シンガポールの人はみんな英語話せるよ。
たまーに話せない年配の人もいるけどね、そういう人は逆に珍しいかも。
でもね、シンガポーリアンの話す英語は訛りがひどいから聞き取れるようになるまでしばらくかかるよ。
シンガポール人の英語はシングリッシュって言ってけっこう独特やの。中国訛りもインド訛りもけっこう聞き取るの難しいしねー。まぁ、向こうからしたら日本人の訛りはヒドイって評判みたいやけど。
芽衣ちゃんもローカルの幼稚園入ったらシングリッシュ習得しちゃうかもよー」

「英語   だったんですね。学校で習ってきた英語とはだいぶ違ったので…
なんか、ちょっとカルチャーショックと言うか…なんというか…」

「シンガポールに来たらしばらくはそのカルチャーショックとの戦いよ。時間通りに来ないし、ドタキャンするし。
そういうのにも徐々に慣れてくるから大丈夫よ。自分の適応能力を信じて。」

慣れてくるんだ…
私が抱いているカルチャーショックや固定観念も、2,3年したらあの時はこうだった、と話せるようになるんだろうか。
美子さんは関西人だからこんな風に話せるんじゃないの?

美子の存在すらある意味カルチャーショックな映子だった。

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。