• 小説 星と陽の間で
  • 夫のシンガポール赴任に伴い来星することになった主人公・映子が、シンガポールと日本の価値観の間で揺れ動く。 そんな映子のこれから始まるシンガポール生活への不安や困惑、希望を描いたストーリー。

星と陽の間で 第14話


前回までのお話
一通り物件を見終えた映子たちは友人佳奈の紹介で知り合った美子の自宅に招かれる。
そこでシンガポールについて話してくれる美子は日本人でありながら外国人のようで、映子はなんとも不思議な感覚に陥った…




「…ってかお腹空かない?ゴハンにしよっか」

「ありがとうございます!シンガポールでも和食って作れるんですね。しかもこれって…お手伝いさんが作ってらっしゃるんですか?」

「そうそう。日本の食材は割とどこでも買えるよ。高いけどね。
ウチのヘルパーは色々覚えてくれたから助かってるの。今はもう私より上手かも。
最初はいろいろ大変やったけどねー。
コタローは肉じゃが潰して食べさせるけど、芽衣ちゃんはどうする?
お粥さんは炊いてるからいるなら言って。いつもちゃんと別で作ってる?」

「え、大人のもの食べさせて大丈夫なんですか?」

「ウチはね、もう三人目やし。
お粥さんと混ぜたら塩気も薄まるから大丈夫かなー、って。
お味噌汁も上澄みにお白湯混ぜて飲ませたりね」

「えー、雑誌では見たことあるんですけど実際にあげるのは怖くって。
シンガポールのことだけじゃなくって育児のことも色々教えてください!」

「モチロンよ!」

「ハイ、ドウゾー」

「え、コレ俺が食べさせんの?」

「お父さん頑張れ。何事も経験!練習!!」

「パパ、普段全く育児手伝ってくれないもんね。」

「やっぱりその辺、日本人はまだ亭主関白文化が残ってるのかな。私がこっちに来る時でもすでにイクメンとかいう言葉が定着しつつあったけど、やっぱり国民性として難しいのかもね。
ヘルパー雇うのだって、日本人は欧米人のご主人に比べると二の足踏んじゃう人多いし。
『他人と一緒に住むのはちょっと…』って言ってるけど、半分はそうで、半分は家事・育児は母親がするもの、っていう先入観がなかなか抜けないのかな、って思ったり。」

「ふふっ。パパ意外と日本男児だしね。」

「こっちに来たら欧米人ファミリーと接する時間増えると思うから、きっとご主人も色々考え方変わってくると思うよ。

子供のイベントに参加するパパも多いし、パパ一人で子ども連れてお出かけしてる姿もよく見るし。
色々変わると思うよ、シンガポールに来たら。」

「…」

「それにパパが手伝ってくれないなら、映子ちゃんもヘルパー雇ったらいいじゃない。
身体はもちろん、気持ちにも余裕できるよ。
パパも後ろめたさ無くなるよー。」

美子さんにつられてワンオペ育児してますアピールをしてしまったけれど、夫は明らかにムッとしていた。
こういう機会でもないと自分の気持ちを表現できないのも事実で、そんな自分が嫌になる。
私もシンガポールに来て色々変わりたいな…

ってか美子さん今サラッと「ヘルパー雇ったら?」って言ったよね?

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。