
星と陽の間で 第15話
前回までのお話
美子からシンガポールのことだけでなく育児や夫への接し方などのアドバイスももらいながらヘルパーを雇ったら?と提案された映子。
興味はないとは言えないものの昨日見たヘルパールームや夫の機嫌を考えるとそれどころではない映子であった。
「え、でも私、専業主婦だし…子供一人しかいないし…ねぇ、パパ」
「うーん、でも今も一人でできてるしね。わざわざ雇わなくても大丈夫なんじゃないの」
「…。
専業主婦やから家事全部一人でやらなアカンとか関係なくない?映子ちゃんが一人で全部やりたいんやったらそうしたらええと思うけど、しんどかったら頼んだらええんちゃうん。
映子ちゃんは心身ともにボロボロになっても家のこと全て自分でやりたいのか、お金払ってでも自分のために時間と余裕を作りたいのか。
耕平さんはヨメがあったかいお茶飲めんでも、自分の行きたい時にトイレ行けんでも母親やったらそれはしゃーないと思うのか。
しゃーないからやらなアカンとか、どうしようもないとか、そうちゃうからな。そんなんただの思い込み、呪縛やで。
自分がどうしたいか、やで。
自分の時間持つことは悪い事ちゃうねんで。
あったかいお茶飲める手段がシンガポールにはあるんやから。」
「…美子さん」
「私は日本にいる時はヘルパーいなかったからね。両親とも遠いから手伝ってもらいたくてもすぐに、とはいかなくて。
長男が3歳の時に次男が生まれて、次男が1歳でシンガポールに来たの。だから両方での育児経験も踏まえて色々思うところがあるんよね…
…ゴメン、なんか熱くなっちゃって。耕平さんちょっと引いてるもんね。食べよ食べよ!」
美子さんの言葉はいつも私を縛り付けている「お母さんだから」という鎖を緩めてくれたような気がする。
呪縛、固定観念、お母さんだから…
なにかの輪郭が見えてきそうな気がする。まだそれが何はハッキリしないけれど。
もしかしたらシンガポールで何かが変わるかもしれない。
自分で変えられるかもしれない。
外国に住むってそういうことなのかもしれない。
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