
壁 - 教師の私 駐妻の私 – 【第4話】
ネットに蔓延するいくつものホラーストーリー。実際に雇用したことのない主人公・奥野 貴美子にとってはそれが100%の知識であったが、実際の雇用している様子を聞いてみるとリアルなヘルパーと雇用主との関係が見えてきた。
「ウチも狭いよ。ベッドも小さいのしか入らんし。でもウチのヘルパーさんのミャンマーの家は屋根はあるけど壁はないって言ってたし、シャワーはないから川で水浴びって言ってたから水とかお湯とかそういう問題ちゃうみたいやで。
雨風がしのげて蛇口ひねったら水が出て、ポチってしたら電気がついて、自分の国にいたらそんな贅沢な生活できひんからな。そこは考え方ちゃうかな」
「確かに。サキちゃんとこのヘルパーさんはミャンマーやもんな。面接もスカイプ繋がらんからってビデオレター見ただけやってんやんな?
私も部屋のことは気になったから面接のときにヘルパーさんに聞いてみたんよ。『部屋に窓がないシェルターだけど、それでもいい?』って。そしたら『自分の部屋があるならそれでいい』って言ってくれたから彼女に決めたっていうのもあるわ。
私の前に面接した人は日本人じゃなかったらしいんやけどその人には『キッチンで寝てもらうけどいい?』って聞かれたらしくて、それはイヤやから断った、って言うてた。…っていうかキッチンはなー。一応カーテンで仕切られてたらしいからMOMのルール上はギリギリクリアかもしれんけど…。それでも日本人の感覚からしたらちょっとなー」

「キッチンに寝てもらうんですか!そんなことする人本当にいるんですか?それは文化の違いで片付けていいんでしょうか。私には理解できません!」
「私らみたいな新参者と違ってシンガポーリアンなんかは長い間ヘルパーと一緒に生活してきてるんやから、あの人らなりのルールがあるんやろ。奥野さんが理解できひんのやったら奥野さんはそうせんかったらええんよ。
よその領域は荒らしたらアカン。我々は所詮、外来種なんやから」
「さすがやな! サキちゃんの割り切りっぷり好きやわー!」
「…。
でも、確かにそのミャンマーの自宅に比べたらマシかもしれないですけど、私たちの暮らしとは全然違いますよね?良心痛まないですか?」
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