• 私のストーリー
  • 私のストーリー Presented by The Story Behind Smile シンガポールで働く外国人労働者たち。彼らが笑顔でいられるのは私たちの知らないこんなストーリーがあったから… 外国人労働者によるボランティアグループ The Story Behind Smileの協力を得て彼らのストーリーを日本語でお届けします。

The Story Behind Smile -チョコレートと飛行機-

今回ストーリーを提供してくださったのはフィリピン出身のElizabeth Moranteさん(34歳)
クウェートとマレーシアでヘルパーとして勤務の後、来星。もうすぐ4年が経つそうです。

プリンセス - 父は私をそう呼んでいた。でも小さい私はおとぎ話の中に出てくるようなお姫様なんかじゃなかった。むしろ、私が7歳になる前に父が亡くなった途端、私の人生は暗い穴の中に真っ逆さまに落ちて行ったとさえ思う。それでも、父が私の心に描いた素敵な思い出は今でも鮮明に思い出すことができる。

父は母と私を含む4人の子どもたちを置いて天国へ行ってしまった。祖母が最年長の私を引き取り、弟たちは母が面倒を見ることになった。時折、母と兄弟の家を訪ねることはあったけれど、時間がなくてほとんど会うことはなかった。

一日の家事を全て終え、夜になると私は決まって祖母の家の裏庭にある草むらに横たわり、星空に問いかけるのだった。

「いつになったらそこに行けるの?」
「いつになったらお金持ちになって家族みんなと一緒に暮らせるの?」

誰が言ってたっけ「流れ星に願い事をすると叶う」って。夜になると空を見上げ、流れ星が現れるのを待つ…それがいつの間にか私の日課になっていた。

あ!流れ星だ!!しかも2個!

でもあまりに一瞬だったから、願い事を口にする間も無く瞬く間に闇へと消えてしまった。今日もダメだった…そう思いながら私は肩を落として自分の部屋に戻るのだった。

隣に住む人は家族が海外に住んでいるらしい。その時の私はまだ小さすぎて"海外"というのがなんのことなのかは理解できなかった。それでも私の記憶に鮮明に残っているのはチョコレートがいっぱいに詰まった甘い香りのする箱、そしてその隣人らが大喜びで箱から取り出して次々に試着する色とりどりの洋服と少し離れたところからでも香る、レザージャケットの匂いだった。

「ああ、これは海外の匂いだ」私はそう思いながら隣人の家を覗き込み、チョコレートを一つ分けてもらえるのを期待するのだった。しかしその隣人は私の存在に気がつくといつもドアをバタンと閉めてしまう。そうして家に帰ると、私は自分の部屋でJack Stoneで時間を潰しながら願うのだった。「いつか海外に行きたい。海外に行ったらチョコレートをうーんと買うんだ」と。

ある日、隣人が「もっと早く空港に行かないと。そうしないと飛行機に乗り遅れてしまうよ」と話しているのが聞こえてきた。私は、その時になってようやく海外に行くには飛行機に乗る必要があるということを知り、その日から毎夜、星を眺めるだけでなく夜空を過ぎてゆく飛行機を目で追いながら、「いくつになったら飛行機に乗れるの?お金はどれくらいかかるの?飛行機の中ってどんな感じなんだろう?」と自問自答しながら、眠くなるまで想いを馳せるようになった。

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