• 小説 壁 - 教師の私 駐妻の私 -
  • 夫のシンガポール駐在に帯同するためにキャリアを諦めて来星した主人公・奥野 貴美子。慣れない子育てと初めての海外での専業主婦業により、今までの生活とは全く違う生活に自分自身の存在価値を見失いかけていた。そこで夫から提案されたヘルパー雇用という道。奥野 貴美子はヘルパー雇用を通してどう変わっていくのか。

壁 - 教師の私 駐妻の私 – 【第9話】

【前回までのお話】 第8話はこちら
予定通りに物事を進めたい私と思いつきの行動を楽しむ妹・由貴子。全くタイプの違う姉妹だが、ヘルパーさんが来てくれるまでの間のさくらの世話を頼めるのはこの妹だけ。この選択が吉とでるか凶とでるか…

「メインはさくらのお世話よ。大丈夫なの?」

「わかってるよー。で、なに人にする?やっぱりミャンマー人?ラオスは全然英語通じなかったけど、ミャンマー人のメイドさんって英語話せるの?ってかなんでミャンマー人なの?フィリピン人とかだったら英語話せるんじゃないの?」

「確かにね。フィリピン人はきれいな英語話す人多いし、ヘルパー経験のある人も多いし、きっと楽なんだと思う。ミャンマー人は英語が不自由な人が多いって。面接も向こうが撮ったビデオを見るだけって聞いてる」

「なにそれー!超ウケる!!そんなんアリなの?一緒に住むんでしょ?そんなんで決めちゃって大丈夫なの?すっごい面白そうなんだけど」

「面白そうって…。私としては何も知らない人に一から色んなことを教えられるのはいい経験になるかな、と思ってるの。言葉も通じない相手にどうやってこっちの希望を伝えられるのか。国際化も進んできてるし、これからそんな子も学校で受け入れるかもしれない。そんな時にこの経験が活かせるかもしれないし、何よりも私の生活のハリっていうの?やっぱり人に何かを教えることをしていたい。そう思うとミャンマー人がいいのかな、って思うのよ」

「お姉ちゃん、ホント教師の仕事好きなんだね。私なら仕事せずに好きなことができるなら仕事離れたいけどな。…ってか私、どれぐらいいればいいの?」

「それはね、きっと仕事を離れたことがないからよ。仕事したくても出来ない状況になったらきっと違う考え方になるんだと思う。どれぐらいかぁ…。どれぐらいいてもらおうかなぁ。私としてはお手伝いさんが来るまでの間は居てほしいんだけど…」

「えー、ってことは私メイドさんに会えないの?ちょっと一緒に住んでみたいんだけど」

「私の方は可能な限り居てくれたらいいな、って思ってるよ。お好きなだけどうぞ」

「やった!なんかワクワクしてきた!用意ができたらすぐ行くよ!」

「すぐ行くって、近所じゃないんだから。でも頼りにしてるよ。ありがとうね」

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