壁 - 教師の私 駐妻の私 – 【第9話】
非日常が大好きなあの子にはちょうどいいイベントなのかもしれない。
ヘルパーが来てくれるまでには少しつわりも治まり、私も自由に動けるようにはなっているだろう。
今までの生活とはガラっと変わるこれからの生活は変化を嫌う私にとって、とてもストレスになるだろう。
それでもヘルパーを雇おうと思うのはシンガポールで夫が不在の間、一人で子育てをする事への限界、さくらに対して余裕がなくなりイライラしてしまうことへの罪悪感から逃れるため。
私は他に方法がないからお手伝いさんを雇うのだろうか。
そんなことでこれから一緒に住むヘルパーと上手くやっていけるのだろうか。
できることなら私はこれをきっかけに新しい自分の可能性を見出したい。
後ろを向いての雇用ではなく、お互いにとって前に進める機会にしたい。
「孝志くん、私ヘルパーを雇うことにしたよ。ミャンマー人の、出来るだけ経験の浅い子にしようと思うんだ。」
「ヘルパーさんね。何回聞いてもまだ介護してくれる人のイメージだな。それより、やっと決心したんだね。『ミャンマー人で出来るだけ経験の浅い子』ってすごく具体的に決まってるし、ふふ。なんだか一瞬で物凄く話が進んだね。貴美ちゃんらしいと言えば貴美ちゃんらしいんだけど」
「でもね、実際にウチに来れるのはしばらくかかるみたいだからその間、由貴子に来てもらうことにしたの。良かったかな?」
「ゆきちゃん来てくれるの?よかったじゃん!僕も安心だよ!
来週の出張に間に合えば助かるんだけどなー。こっちの勝手な都合なんだけど」
「用意ができたらすぐ行くって言ってたからすぐ来てくれるんじゃない?あの子のことだから」
「面白いよね、ゆきちゃん。自衛隊入りたかったって聞いたときはビックリしたけど」
「薬剤官の話でしょ?私だったら絶対病院か調剤薬局に務めるよ!自衛隊で薬剤師として働くとか私、本当にあの子と血が繋がってるのか心配になる。しかも、なんで自衛隊入りたいって思ってた子が就職もせずあちこち飛び回ってるんだか。もうぜんぜん理解できない」
「あちこち行ってるのも僕らにはわからない目的があるんじゃない?僕は純粋にゆきちゃんのあの行動力を尊敬するよ」
「確かに私にはできないもんね。私も尊敬してるよ、あの子のことは」
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