
壁 - 教師の私 駐妻の私 – 【第10話】
ヘルパーや妹との生活に対する不安を夫に吐露した奥野 貴美子。ミャンマー人を雇用することで心は決まっているのだが、やはり言葉や生活習慣の違いが不安材料である。夫に促されとりあえずエージェンシーに行ってみることに決めたのだが…
「シンガポール、初めて来たんですけど面白いですね!色んな国が集まってて、シンガポールに来ただけでいろんな国に行った感を味わえる!なんかおトクー。」
姉のつわりは少しおさまってきたと思っていたら、今度は切迫流産で自宅安静という医師からの指示が出たそうだ。姉の代わりに私がメイドさんの面接に行くことになったのだが、さすがになんの経験もない私一人に任せるのは不安だったのだろう。姉の友人・美子さんが一緒に行ってくれることになった。
「シンガポールにはいろんな人種がいるからね。シンガポール人って7割が中華系で、その次マレー系、ほんでインド系、やったかな。欧米からの駐在員、日本人・韓国人も多いからインターナショナルスクールも30校以上あるし、なかなか他にはないタイプの国ちゃうかな」
「スゴイですね!そんなにたくさんの人種が共存してるのに民族争いみたいなのは起こらないんですか?」
「国が上手いことバランス取ってるんちゃうかな。祝日も公平にムスリム・ヒンズー・キリスト教・仏教のイベントを取り込んでるし。まぁ、ホンマは色々あるんかもしれんけど私らシンガポーリアンちゃうからそこまで詳しいことはわからんけどね。でも由貴子ちゃんスゴイね。初めてシンガポールに来て、いきなりお姉さんが雇うヘルパーさんを選ぶって。よっぽど好みを理解してるってことよね」
「いやー、姉は昔からなんか思い立ったらすぐやらないと気が済まない性格なんで。動けるなら自分で探してると思います。今は家で悶々としてるんじゃないですかね。でも、自分のことは客観的に見れないから意外と周りにいる人がマッチングしてあげるのはアリなのかもな、って思ってます。大体の要望も聞いてますし。
まぁ、合わなかったらそのときはゴメンねーって感じです。ははは。」
寝込んでいる姉のヘルプでシンガポールに来ることになったのだが、こんなことでもなければこんな観光客でいっぱいのミーハーな国に来ることはなかっただろう。平和で安全で清潔で、残念ながら私の”行きたい国リスト”にはまず上がってこない。
ただ、そのイメージはどうやら間違っていたようだ。
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