• 小説 壁 - 教師の私 駐妻の私 -
  • 夫のシンガポール駐在に帯同するためにキャリアを諦めて来星した主人公・奥野 貴美子。慣れない子育てと初めての海外での専業主婦業により、今までの生活とは全く違う生活に自分自身の存在価値を見失いかけていた。そこで夫から提案されたヘルパー雇用という道。奥野 貴美子はヘルパー雇用を通してどう変わっていくのか。

壁 - 教師の私 駐妻の私 – 【第11話】

「だって私だったら絶対無理だもん。何を基準に選んだらいいのかわかんない。会ったこともない人を限られた情報の中から選ぶとか、みんなホントにそんな風に選んでるんですか?ある程度候補を絞ってもらってその中から選ぶならまだ想像つくけど、全く一からの状態で選ぶとか無理過ぎますよー」

「まあ確かに縁の部分は大きいからね。それでも今までみんなこうやって選んできたんやからそれでも成り立ってるってことなんやろね」

「それで一緒に住む人を選べるのがスゴイと私は思うなー」

確かに客観的に自分の事を見ることは難しいのかもしれない。四六時中一緒にいる相手だから雇用主本人が熱心に選ぶのは当然なのかもしれないが、意外と雇用主の性格をよく知っている配偶者等の身内や親友などが選ぶ方が上手くいくのかもしれないな。

由貴子の突拍子もない発想は意外と新しい道なのかもしれない。

「ここ、ここ!けっこう評判いいらしいんやけど。気に入らんかったら他あたってみてもいいし。とりあえずここで何人か見てみよか」

「そうですね。数こなさないとわからないもんですか?」

「うーん、人によりけりかな。30人以上面接する人もいるし、2人ぐらいで決めてしまう人もおるし。いっぱい見ると色々比較できるんやけど、私はよーわからんようになるから2~3人の中から選ぶかな。の前にめっちゃ条件で絞るけどね」

「条件か。姉から聞いてる条件は『ミャンマー人で出来るだけ経験の浅い子』だけなんですよね。条件て皆さん他にどんなことを気にされてます?」

「例えば、自分の子どもの面倒を見て欲しいならヘルパーさん自身にも子育て経験があるとか、前の雇用主のところでの子育て経験があるとかやけど、奥野さんは経験の浅い子がいいんよね?そしたらそこは必要ないし、宗教気にする人もいるけどミャンマー人やったらほぼ仏教やし。あとは、社交的な人か寡黙な人か、とかかな?」

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