シンガポールで働くヘルパー(メイド)の実態【後半】

本記事はSWEE KNOT PTD. LTD.( &H)のファウンダーの一人である吉田麻里がシンガポール日本商工会議所 2020年5月月報に寄稿した記事である。

前後半の2回に渡りお届けする。後半では雇用主が担う責任やヘルパーを雇用するための費用、仕事内容、ヘルパーを雇用する日本人家庭について触れる。

シンガポールで働くヘルパー(メイド)の実態【前半】はこちら


雇用主の要件と責任

ヘルパーが保持するFDW向けの就労ビザ(Work Permit)には雇用主の名前と住所が記載され、シンガポール在留の責任の多くを雇用主が担う。

 雇用主の責任とは、ヘルパーの生活や労働環境の整備、セキュリティボンド(雇用主が法律やFDW雇用に関する規定を破った場合にシンガポール政府へ最高$5,000を支払うという誓約)の購入、半年に一回の健康診断、医療費負担、契約更新後にヘルパーが有給で自国に2週間帰国する(ホームリーブ)ための費用負担などである。

雇用方法と費用

ヘルパーを雇用するためにはエージェンシーを通して雇用する方法と直接雇用する方法があり、雇用主の約86%がエージェンシーを利用している。*2

 シンガポールには約1,000社のエージェンシーが存在しており、各エージェンシーによって登録しているヘルパーの国籍やNew、Transferなどの属性が様々である。また雇用するヘルパーがNewやTransferかによって手続きが大きく違うため、初期費用も異なる。費用については、毎月の基本給や食費の補助に加え、ヘルパー雇用に対する税金も毎月収める必要があるため、合計で毎月約1,000ドルを負担するのが一般的である。これに加え、前述の健康診断、帰国費用などの負担が発生する。なお国籍によって最低賃金が規定されており、現時点での最低月給はフィリピン人570ドル、インドネシア人550ドル、ミャンマー人450ドルである。賃金はシンガポールでの職歴により上がっていくことが多い。

ヘルパーの仕事内容

 雇用主はヘルパーにどのような仕事を依頼しているのだろうか。MOMが行った調査項目の一つであるヘルパー雇用理由より、仕事内容が見て取れる。雇用理由として最も多いのは掃除や洗濯である。次いで、料理と子どものお世話が挙がっている。*2

 家事の中でも料理や洗濯、子どものお世話は毎日行う必要があるが、多忙な毎日の中で掃除は後回しになりがちである。「ヘルパーを雇用してからはいつも家がキレイで心地いい」という声を耳にする一方で「子どもが自分で片付けなくなる」という意見もあり、親である雇用主がヘルパーや子どもにどのように伝えるか、あるいはルールを設けるかを考える必要がある。

 またヘルパーの仕事として禁止されていることがいくつかある。例えば、雇用主の仕事を手伝うことは禁止されている。またヘルパーが雇用主以外の家庭で働くことも禁止されている。万が一、ルールを犯した場合は、ヘルパー自身に加えてヘルパーの雇用主、違法でヘルパーを雇用した人の三者にペナルティが課せられる。あくまでも「雇用主の家庭」に準じる業務内容である必要がある。

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