
壁 - 教師の私 駐妻の私 – 【最終話】
この人と決めていたヘルパーさんがタッチの差で他の人と契約が決まってしまったと告げられ、放心状態の貴美子。そんな時にばったり出会った感じの良いヘルパーさんが職探し中だということがわかり、急遽そのヘルパーさんと会うことになったのだが…。貴美子はヘルパーさんを雇うことができるのか?ついに最終回!
指定された場所に着くと、美子さんと先ほどの女性が我々を待ってくれていた。彼女は我々の姿を見つけると、駆け寄ってきて抱っこひもの中の姪の姿を覗き込んだ。そして、気持ちよさそうに寝息を立てているのを確認した彼女は唇に人差し指を当て、静かに微笑んだ。
「美子さん、彼女が求職中ってわかっててついて行ったんですか?」
「ちゃうよ!こないだ来た時も1軒しか見てないし、せっかくここまで来たんやったら他のエージェンシーも見ときたいなー、って。ただそれだけ。で、『この子にそこで会って』っていう話をしたらエージェントに『この子、次の雇用主探してるの』って言われて。でも奥野さんもう決めてるって言ってたし、『ごめんなー、期待には沿われへんわー』って言ってたとこやってん。まぁとりあえずエージェンシー行ってバイオデータ見せてもらったら?」
「…。
…。
…。
美子さん、私この人を雇います!」
「お姉ちゃん?!」
「奥野さん?!」
「お姉ちゃん、ちょっと落ち着きなよ。今は冷静な判断ができなくなってるんだから今決めるのは危険だよ!」
「でも、あの人、さくらをあやしてくれてたとき、さくら嬉しそうにしてたでしょ?それにさっきの見た?私たちの姿見て真っ先にさくらの様子見てくれたんだよ。きっと大事にさくらのことお世話してくれると思うんだ」
「それは確かに…」
「奥野さん、ヘルパー雇うって決めた時と一緒やな!!! ゆきちゃん、多分もう何言っても無駄やわ。な、奥野さん。とりあえず、バイオデータ見に行こうや」
姉の All or Nothing な性格がここでも出てきてしまった。
これは一時の気の迷いなのか。住み込みで働いてもらうということはこれから寝食を共にするということ。そんな相手をこんなにも簡単に決めてしまっていいのだろうか。
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