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FDW(ヘルパー・メイド)と雇用主が互いに尊重し合う関係にみんなが注目している理由 Commentary: Why a respectful relationship between foreign domestic workers and employers is in everyone’s interest

Centre for Domestic Employees(以下CDE)のエグゼクティブ・ディレクター、Shamsul Kamar氏によると、これまでは法律そのものに注目が集まっていたが、昨今の雇用主の最大の関心は、Foreign Domestic Worker(以下FDW)との良好な雇用関係を保持することに変化しているという。

FDWとその雇用主の雇用関係は、多くの人が迷い込む迷宮のようなものだ。

雇用主もしくはFDWが犯罪を犯す度にメディアが起訴内容や罪状、そして判決を定期的に報道することで世間の注目が集まり、一般的にFDWと雇用主の関係は揉め事だらけの雇用関係だというイメージが付きまとっている。

過去1年に渡り、FDWを虐待した雇用主に有罪判決が下されたほか、耐え難いほどの虐待をした雇用主から逃れるために、FDWが命をかけて自宅のある15階から降りてきてたという事件もあった。一方で、雇用主やその家族が被害者になったケースもあり、犯罪を犯したFDWにも有罪判決が下されたという報道もあった。

アンケート調査では、高い満足度

これらの報道を見ていると、雇用主とFDWとの関係はお互いの悪事に目を光らせ、常に緊張感のある不安定な関係だという印象を持つ人も多いのではないだろうか。しかしこれは、真実と全くかけ離れている。

2017年、CDEがシンガポールにおけるFDWの状況を把握するために、FDW1,012人と雇用主1,004人を対象とした大規模な調査を実施した。調査の結果、75%に上るFDWがシンガポールで働くことに満足していると回答、70%が雇用主と友好的な関係を築いていると回答した。

FDWが母国から遠く離れた家で、雇用主の為に一生懸命働くには、雇用主とFDWの調和のとれた関係が大切だというのがCDEが長年に渡り訴えているモットーである。

CDEとNUS(National University of Singapore)のChua Thian Poh Community Leadership Centreの学生が2018年から2019年にかけて実施した30人のFDWを対象とした調査では、雇用主とFDWの間に良い関係を築こうと互いを尊重する気持ち、そして互いへの敬意こそが調和のとれた関係を形成するということが明らかになった。これは、FDWが仕事に必要なスキルを持っているかどうかや、母国の文化や生活習慣がシンガポールのものに似ているかどうかよりも、雇用契約満了へとつながる最も重要なファクターであることがわかった。

この調査結果は、雇用主とFDWが良い関係を築くことがいかに重要かを物語っている。雇用契約が満了するということは、雇用主が次のFDW即ちリプレイスメントを探す時間と費用が削減できる。

では雇用主とFDWが強い絆を育み、調和のとれた関係を築くためにはどうすればよいのだろうか。CDEは、雇用主とFDWの間の心理的契約を強め、信頼を裏切られたり裏切ったりするなどの心理的な契約違反が起こらないようにすることで、可能になると考えている。

心理的契約

心理的契約とは相互の利害関係における状況、多くは雇用関係における個人の信念に基づいた諸条件を指す。明解な契約とは異なり、心理的契約は感覚的で、雇用主とFDWの間にある暗黙の義務と権利で構成されている。言い換えれば、それは雇用関係における個人の信念と認識であり、FDWの雇用主に対する恩義や義務であると同時に、雇用主のFDWに対する恩義や義務でもある。

このような信念が社会的交流関係の根底にあり、雇用主と被雇用者が、自分たちの権利や相互利益を期待して、相互的に義務を果たすという互恵性の関係を形成している。この心理的契約の概念は、組織における雇用関係の研究に広く応用されている。

シンガポールをはじめ、世界中で行われている研究では、心理的契約の違反が義務感の低下、コミットメントの低下、満足度の低下、業務外の責務の減少、追加業務をすんなり受け入れられなくなる、などの否定的な結果につながることが一貫して実証されている。

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